自分の市場価値を知りたいなら、まずこれをやろう

「私の市場価値って、どのくらいなんでしょうか」

転職相談を受けていると、この質問を本当によくいただきます。ここ最近は特に多くなりました。

そして、そう聞いてくださる方の多くが、同じような状態にあります。市場価値という言葉は知っている。自分のそれが高いのか低いのかは分からない。分からないから、なんとなく不安。だから誰かに聞いてみたくなる。

その気持ち、よく分かります。転職は人生の大きな決断ですから、自分の立ち位置が見えないまま動くのは怖いですよね。

ただ、正直にお伝えすると、この質問には落とし穴があります。市場価値というものを、多くの方が少し誤解したまま考えているのです。

今日は、人材業界で企業と求職者の両方を担当してきた立場から、市場価値の本当の姿についてお話しします。そして、あなたが明日からできる具体的なことをお伝えします。

市場価値は、あなたに貼られた「値札」ではありません

まず、いちばん大事なことからお伝えします。

市場価値というのは、あなた一人に対して一つだけ決まっている数字ではありません。「あなたは750万円の人材です」というような、絶対的な値札が貼られているわけではないのです。

市場価値は、相手と、タイミングによって変わる相対的なものです。

私は企業側と求職者側の両方を担当する、いわゆる両面型のエージェントでした。だから、企業の採用担当者が何を求めているかを、その場で直接聞いていました。そこで何度も目にしたのが、こういう場面です。

まったく同じ経歴の方が、A社では「うちには少し物足りないですね」と言われ、B社では「ぜひ会わせてください」と前のめりになられる。同じ人、同じ職務経歴書なのに、です。

なぜこんなことが起きるのか。企業には、そのときどきで埋めたい穴があるからです。今この瞬間、どのポジションに欠員が出ているか。どんな課題を抱えていて、それを解決できる人を探しているか。会社の成長フェーズはどこか。そういった事情によって、「欲しい人」の輪郭はまったく変わります。

つまり、あなたの市場価値が低いように感じられるとしたら、それはあなたに価値がないのではなく、立っている土俵が合っていないという可能性が非常に高いのです。

ここを取り違えて、「私には何もない」と自分を責めてしまう方を、本当にたくさん見てきました。そのたびに、もったいないなと思っていました。

エージェントと企業が、実際に見ていたこと

では、企業は候補者の何を見て判断しているのでしょうか。

ここからは、なかなか表には出てこない話をします。私が現場で、企業の採用担当者から何度も聞いてきた本音です。

企業側の意見としてまず多いのは、「年齢相応のコミュニケーション力」があるかどうかです。

拍子抜けされたでしょうか。資格でも、実績の数字でも、有名企業での経験でもないのです。お客様や同僚と、円滑に意思疎通ができるかどうか。知識や経験以前の、その一点。

当たり前のことのように聞こえるかもしれません。でも、意外なほど、これができない方が多いのです。

だからこんなことが起こります。仕事上の経験は少し足りないと判定された方が、明るくコミュニケーションが取れて、人に良い印象を与える話し方ができるという理由で、合格する。特に若い年代であれば、「明るい、謙虚、聞かれたことに的確に答えられる」。それだけで評価が上がっていく場面を、私は何度も見てきました。

そして、その逆もあります。

どんなに経験や知識がある方でも、なんとなく暗い印象だったり、質問への答えがチグハグだったり、うまく意思疎通が取れなかったりする場合、落ちる確率は明らかに高くなります。書類の上では申し分ないのに、なぜか通らない。そういうケースの背景には、たいていこれがあります。

私は、この「年齢相応のコミュニケーション力」も、立派な市場価値のひとつだと思っています。

そう考えると、市場価値というものの見え方が少し変わってきませんか。それは資格の数や年収の額面だけで決まるものではなく、「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえるかどうか、という、もっと人間的なものでもあるのです。

そしてこれは、経験が浅くて不安を感じている方にとっては、大きな希望になるはずです。

やっかいなのは、自分では気づけないこと

ただ、ここに難しさがあります。

コミュニケーションの癖というのは、自分ではまず気づけないのです。

生まれ持ったものもあると思います。もともと人と話すのが得意な方はいます。でも、それで諦める必要はまったくありません。できる限り準備をすること、意識すること。それだけで変わる部分は、確実にあります。

たとえば、私はある方に「使う言葉を選んでみましょう」とお伝えしたことがあります。その方は、話の端々にネガティブな言葉が入り込んでいました。ご本人にはまったく自覚がありませんでした。無意識だからです。悪気もなければ、性格が暗いわけでもない。ただ、口癖のようにそうなっていた。

でも、面接の場では、その積み重ねが「なんとなく暗い印象」として相手に届いてしまいます。しかも、面接官がそれを本人に教えてくれることは、絶対にありません。ただ静かに、お見送りの連絡が来るだけです。

無意識にやっていることは、自分では気づけない。気づけないから、直しようがない。何度落ちても、理由が分からないまま次を受けることになります。

だからこそ、第三者にフラットに見てもらうことに、意味があるのです。

では、何をすればいいのか

ここまで読んで、「じゃあ自分の市場価値はどうやって知ればいいの」と思われたはずです。順番にお伝えします。

まず、自分で調べられることは調べてください。

これは少し厳しい言い方かもしれません。でも、大切なことなのであえて申し上げます。ふんわりとした不安を抱えたまま誰かに聞くより先に、できることがあります。

転職サイトを開いて、自分と近い経歴の求人にどんなものがあるか見てみる。求められている経験やスキルの欄を読んで、自分に当てはまるものと足りないものを書き出してみる。提示されている年収の幅を眺めてみる。これだけでも、輪郭はずいぶんはっきりしてきます。

そして、これまでの仕事を棚卸ししてください。何をやってきたか、ではなく、それによって何が変わったかを書き出すのがコツです。誰の、どんな課題を、どう解決したのか。数字にできるものは数字にする。この作業をした人としていない人では、面接での話の説得力がまるで違います。

そのうえで、実際に人に会ってください。

自分の市場価値は、机の上では分かりません。当たり前ですが、価値は相手が決めるものだからです。そして先ほどお伝えした通り、あなたのコミュニケーションの癖は、あなた自身には見えません。

だから、実際に市場に自分を晒してみるしかないのです。

転職エージェントに登録して、キャリアアドバイザーと話してみる。これがいちばん手軽で、確実な方法です。彼らは日々、企業から「こういう人が欲しい」という生の声を聞いています。あなたの経歴を見て、どういう企業から興味を持たれそうか、逆にどこが足りないと見られそうかを、具体的に教えてくれます。

すぐに転職する気がなくても構いません。むしろ、まだ迷っている段階でこそ、話を聞いてみる価値があります。

エージェントは複数登録して、比較してみることをおすすめします。担当者との相性もありますし、扱っている求人の傾向も違うからです。

耳が痛いことを、謙虚に受け止められるか

最後に、いちばん大事なことをお伝えします。

第三者に見てもらうということは、耳が痛いことを言われる可能性がある、ということです。

「その話し方だと、面接官には伝わりにくいかもしれません」 「その経験だと、ご希望の年収は少し難しいです」

そう言われたとき、どう受け止めるか。ここで、その後が大きく分かれます。

ムッとして、その人の意見を聞かなかったことにする。相性が悪かったと片付けて、別のエージェントに行く。もちろんそういう選択もできます。でも、無意識の癖に気づける貴重な機会を、そこで手放すことになります。

耳が痛いことを言われたときこそ、謙虚に受け止めてみてください。全部を鵜呑みにする必要はありません。でも、一度持ち帰って考えてみる。その姿勢がある人は、驚くほど早く変わっていきます。そして、そういう方は結果的に、良い転職をされていきます。

市場価値というのは、固定された値札ではありません。相手によって変わり、そして自分の努力で動かせるものです。

不安なまま立ち止まっているより、まず調べて、書き出して、人に会って、言われたことを受け止めてみる。その先に、あなたがワクワクして働ける場所が、きっとあります。

その一歩を、応援しています。